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川合さん、山本さんにはぐれることもなく、トリノ市の会場に辿り着いたのは、10月25日、現地時間の午後11時を回っていました。今回のイタリア訪問の目的は、テッラ・マードレに参加して、世界のスローフードの動きを肌で感じることと、サローネ・デル・グストで、スローフードの食材と流通過程を知ること。そして三つ目は、スローフードを涵養するイタリア、ヨーロッパの風土や文化に触れてみることでした。
◆テッラ・マードレとは、世界中の食のコミュニティが情報交換を行う国際会議です。会場となったリンゴットオーバルには148カ国から4,803人の生産者、417人の大学関係者に加え、今回は特別に953人の料理人が招集され、食と農に関するテーマごとに熱のこもった意見交換が、5日間にわたって繰り広げられました。
2回目となる今回は、世界の食コミュニティのネットワークを拡充すること、特に、生産者と消費者の間にいる料理人が果たすべき役割を明確にすること、そして、前回の「食の未来に関するマニフェスト」に続いて、「種子の未来に関するマニフェスト」を世界に向けて発信していくことにありました。
農業生産のセミナーでは9カ国の生産者、大学関係者から、アメリカでの放し飼い養鶏の実態や中国における持続的農法、過去に化学肥料依存型ブドウ農家がバイオダイナミック農法に取り組むことより生態系の回復に成功したフランスの事例などが報告されました。
種子の未来に関するセミナーでは、雲仙市の岩崎さんによる在来種の保全活動など13の報告があり、インドのバンダナ・シバさんらは、GM大豆による単作システムが生態系に影響し始めていることに警鐘を鳴らし、今こそ、農家自らの手で種子を採種、保全、販売する自由を取り戻すため「種子の未来のマニフェスト」を実行に移す時だと訴えました。
マーケティングのセミナーでは、ミラノ工科大が、生産者と消費者のネットワークづくりを目指して、対話手法をデザインするという興味深い研究なども報告されました。
最終日には、料理人だけのセミナーが行われ、生産現場に足を運ぶことの意義やそれらを的確に消費者に伝える役割などが叫ばれ、最後にはカルロ会長自らが、「料理人こそが地域と農業を守る大きな使命を担っているのだ」と檄を飛ばして、5日間の生産者会議は幕を閉じました。
まだまだ紹介しきれませんが、世界のあらゆるところで、生態系や生物多様性を守り、限りある資源を有効に使って、地域の経済を守っていこうとする取り組みが活発化していることを肌で感じると同時に、同じ悩みや課題を抱えている人たちが大勢いるということを改めて認識しました。会場内におかれたパソコンでも、多くの生産者がネットワークへの参加登録を行っており、今回のテーマの一つであるネットワークづくりが着々と浸透し始めているようです。
◆テッラ・マードレ会場の隣では、毎偶数年に開かれるサローネ・デル・グストが開かれていました。こちらはスローフードの食材見本市といえるものですが、その規模、参加者の熱意は相当のものでした。小さな生産者がこだわって作ったプロシュート、チーズ、オリーブオイル、ワインなどからは、味音痴な私にさえ、時間をかけて熟成された素材の旨みや香りが伝わってきました。こまめに見て歩けば3日間は優にかかるであろうという見本市は、今後もヨーロッパを中心として食マーケットを強力に牽引していくであろうと確信しました。日本、そして北海道の中でもこんな見本市が出来たら素晴らしいと思います
最後になりますが、不眠不休でお世話いただいた協会本部の石田さんをはじめ、こうした機会を与えていただいたフレンズの皆さんに、そして同行いただいたお二人に心から感謝申しあげます。
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