論説「つながりを学ぶ」4回シリーズ


3.「スローフード」に学ぶ


カルロ・ペトリーニ氏(帯広のシンポジウムにて 2005.2)

 「毎日何気なく食べている食べ物を、たまには立ち止まり見つめなおそう」と世界に向けて提案されたスローフード。「誰が、どうやって、どのくらいの時間をかけて、どういう環境の中で作られてきたのか?」と、考えることが大切だと伝えている。そのことが、「食を通して心のあり方や生き方を問い直す」〜スローフード運動の精神であり、哲学でもある。

 現在取り組んでいるグリーンツーリズムは、都市と農村の交流、食と農のつながり・・、でも、それだけではないことを感じていた。スローフードとの繋がりも深い。

 少し前まで私たちは、ごく普通に家族で食卓を囲み、モノを大切にし、地域社会との繋がりも強かった。しかし、忙しさは私たちから、多くのものを奪っていったのかも知れない?「大量につくり、大量に消費し、大量に廃棄する」そんなモノの流れが経済の豊かさとされる現代社会の中で、食の世界も例外ではすまない。

 大量につくるため、効率優先・生産重視の農業は、石油エネルギーを多用する/農薬・環境ホルモンの問題も避けられない/食卓には輸入したものが数多く並ぶ/日本のフードマイレージ(農水産物の輸送量と輸送距離をあわせた数)は世界の中でも、極端に多い/忙しさの中から手抜きも生まれる/大量な廃棄の問題(消費されず廃棄される食品は年間2000万t)/現代の食生活の乱れに代表される5つの食(孤食・個食・小食・五食・戸食)。どれも思い当たることばかり。このままで良いのだろうか?食は体を育み、心を養うもの。食の乱れは、私たちから心まで奪いかねない。

 今年春に来帯したスローフード運動の創始者カルロ・ペトリーニ氏と山脇正俊氏(「近自然学」:山海堂)の言葉を借りて、「スローフードな食卓」を提案したい。

 ・美味しさ(味覚はひとり一人が持っている文化によって決められる)
 ・環境に負荷をかけない作り方
 ・健康で安全な食(健康な環境から)
 ・その土地で生産された旬の食材(地産地消)
 ・心(愛情)を込めた料理
 ・愛する人たちと楽しく食べる(団らん)。

 これこそ、心地良い食卓の風景となり、生きる力となる。

 「環境のクオリティーがなければ、食品のクオリティーは達成されない。そして環境のクオリティーは、そこにある風景のクオリティーでもある」とカルロ氏は言う。これらスローフードの実現のためには、もはや対処療法では通用しない。ライフスタイルの見直し、スローライフへの転換なしには実現できないだろう。

 「安物を海外で大量に生産し、大量に消費し、使い捨てる」ことから「良いものを国内で少量生産し、慈しみながら修理しながら使う」へ。そのことが暮らしを見つめ、社会を見つめ、地球環境を考えることになり、「近自然」に繋がっていく。(つづく)

 
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