基調講演
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スローフード・シンポジウムin帯広

■開催日時:2005(H17)年2月27日(日)13:00〜15:00(15:30)
■開催場所:とかちプラザ 2F 視聴覚室
 13:10〜 基調講演 「スローフードと食の安全の関係性」


カルロ・ペトリーニ会長(通訳:石田雅芳氏・スローフード協会イタリア本部)
基調講演の内容は(社)北海道農業改良普及協会『農家の友』5月号掲載分より

■食の工業化

 スローフード協会は15年前にパリ市で生まれ、現在、世界の100カ国で活動されています。スローフード協会がワインと食にだけ言及する協会だったとしたら、ヨーロッパ以外の国に影響することはなかったでしょう。おいしい食材をプロモーションするだけの協会であったなら、イタリア国内からでさえ出ることはできなかったでしょう。現在、スローフード運動が100を超える国で展開されているのは、地球レベルの問題に答えているからです。
 過去50年の間で私たちは皆均一化されてしまいました。そして、それぞれの国で培われてきた知識が変わりつつあります。それは何故かというと、それぞれの国の文化が破壊されてしまったからです。1948年のイタリアでは、人口の50%は農業生産者でしたが、現在は4%に落ち込んでいます。1940年のアメリカでは、37%の人々が農村で生活していましたが、現在は1%です。日本では7%だとお聞きしています。
 この50年間に出てきた問題として食の工業化があります。
 工業社会の論理が農業経済や生産活動の中に持ち込まれました。しかし、これは間違った論理です。自分たちが生活している地域の文化を破壊してしまうことになりました。フルーツや野菜などの品種が失われ、いくつもの動植物の種類が絶滅していきました。その理由は単に”生産性が低かった”というだけなのです。地球上では毎日、フルーツと野菜が5種類ずつ失われています。イタリアではこの1世紀の間に5種類の乳牛と10種類の羊を失いました。私たちはこの「種の均一化」に対抗しなければなりません。
 その原因は、生産性の高さだけを追求する工業社会の論理に自然が負かされてしまったからです。何もかも多く、安く、集中して作らなければならない、環境が破壊されても、農業社会の形態や文化が根絶されても、味覚が失われても、「問題ない」と言います。そしてわれわれは、この50年間に1,000年をかけて築き上げてきた全てのもの失いました。これはイタリアでも、フランスでも、アメリカでも、日本でも同じです。
 もっと作れ! もっと儲けるんだ! 豊かな国だ、たくさんの金貨を持っている国だと認識されるために。そうではなく、豊かな国とは、正しい生産物が豊かにある国であると評価されなければなりません。その国の豊かさは、その国で暮らす人々の幸せの度合いの大きさです。お金があっても、人々が「不幸だ」と感じるのでは豊かな国とはいえません。また、人々は全てお金で解決できると思い始めています。しかし、そのためにはもっと生産しなければならないのです。そしてこの間違った論理を、歴史・文化・自然について教えることなしに、子どもたちに教えていかなければならないのです。
 私たちはこうした均一化や災いに対してまったく手を付けずにいます。人々がもっと真剣にこの問題を考えれば、道は自ずと変わっていくのです。
 人は経済活動をより良く行おうとしますが、そのコストを総体の中で考えようとはしません。「大量製品の食品がほしい。安いから」と言う人でも、その生産物が健康に悪いものだったら、その後に医薬品にお金を使うことになるでしょう。また、環境を破壊してしまうかもしれません。これらの全てのコストを一緒に考えなければなりません。一見安く見えるものも、総体で考えればより多くのお金を支払っていることになります。
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