日本短角牛
Tankaku (Japanese Short-horn) cow
Razza bovina Tankaku
■名称:日本短角種(短角牛、赤ベコ)
■日本短角種(短角牛、赤ベコ)は旧南部藩で飼われていた南部牛に由来する牛で、寒さに強く、放牧に適し、子育てが上手という特徴がある。日本で主流の黒毛和種が脂肪分の多い、いわゆる霜降り牛肉を産するのに対し、低脂肪で滋味のある肉を産する。飼育方法は夏山冬里方式と称されるもので、母・子牛とも春から晩秋まで草地や林に放牧して子牛の育成と自然交配による繁殖をおこない、冬期は里の農家で飼育される。こうした牛の特性や飼育方法は、北海道の厳しい自然条件と社会・経済条件に適応するように、地域の人々によって長い年月をかけてつくり上げられてきた。
しかし、牛肉輸入自由化以降、日本短角種の生産は低迷を続けており、現在、生産はごく一部の地域に限られ、飼育頭数も約1万頭(平成14年)まで減少し日本の肉用牛総頭数の1%にさえ満たない。
■現在の生産地:北海道えりも町、旭川市江丹別、岩手県岩泉町・山形村・浄法寺町・安代町、秋田県鹿角市、青森県七戸町など。
■生産時期:他の肉用牛と違って自然交配による繁殖を行っているため、恒常的な出荷が難しい。一般には初春から初夏が出盛り・旬になる。
■伝統的な料理法・加工法、食べ方、催事との関係: 短角牛肉のたたき・短角ベコ汁
■現在の飼養戸数および頭数(北海道・岩手)
(1)繁殖牛62戸540頭(2)肥育牛8戸546頭
■歴史的背景:
藩政時代から明治初期に役牛として岩手県内に2万頭の南部牛が飼養されていた。この南部牛は山道の旅に適していたため、急峻な山道が多い北上山系を山越えし、沿岸部の産品(塩、魚、鉄等)を3〜4日間かけて内陸に運ぶために使われてた。(この時に歌われていたのが南部牛追唄である。)
その後、明治4年6月に米国からショートホーン種(短角種)が導入され、南部牛との交配が行われ、雑種牛の優秀さが現れ大型化が進んだ。また、明治時代には産業構造の改革と変化、交通の発達、消費生活の変化により、洋種牛の導入が盛んになり、南部牛の減少と伴にホルスタイン種やエアーシャー種、短角種が主流となった。
このように、短角牛がつくられてから、北海道や東北地方各県で独自の改良が重ねられ、名称についても褐毛東北種、東北短角種、短角種系などそれぞれ異なっていた。
昭和20年、岩手県では「褐毛東北種」として登録事業を開始し、昭和29年、東北地区で個別に呼称されてきた短角種が「日本短角種」に統一される。そして、昭和32年日本短角種登録協会が設立され「日本短角種」として登録される。以来、肉用牛として改良が重ねられ現在の「日本短角種」となっている。
■問い合わせ先:
北海道えりも町 高橋祐之 01466-3-1642
北海道旭川市江丹別
荒川信基・恵美子 0166-73-2333
岩手県(株)岩泉産業開発 0194-22-4434
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