基調講演
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■東南アジアからやって来る工業化されたエビを買わない

 スローフード協会は今、「東南アジアやタイで養殖されているエビに反対する」新しいキャンペーンを始めようとしています。これは日本人にも関係します。工業化されたエビの飼育はバングラディシュ、タイ、インドの沿岸地帯で行われています。大きなプールや観光施設はマングローブの林を壊します。そして、津波が襲ってきたときに緑の防波堤はもうありませんでした。何千人もの人々が津波の被害で亡くなりました。何世紀にもわたって人々がマングローブの林を守ってきたのは、海から人々を守ろうとしたからです。
 エビを育てるためのプールでは、より早く成長するように抗生剤や成長促進剤が使われています。また、村の淡水を汲み上げ、海水と混ぜて、エビを捕ったあとの汚染された水はまた海に捨てられます。300kmにもわたる海岸地帯で、海の魚は死に、そこで暮らす漁民たちはどんどん貧困になっていきます。
 エビのプールがあった場所は昔、水田でした。その水田では100人の人々が働いていました。現在は、エビとともに2人しか働いていません。伝統的なエビの養殖は根絶してしまいました。なぜなら、私たちヨーロッパ人、アメリカ人、その他の国がもっと多くのエビをほしがるからです。
 私たちのキャンペーンの標語は「東南アジアからやって来る工業化されたエビを買わないようにしよう」です。私は東京の築地の魚市場で、すべてのエビの産地が書かれているのを見ました。それは日本国内ばかりでした。もし、国内産だけで足りないのであれば、少なく食べるように努力しましょう。私たちはエビだけを食べて暮らしているわけではないのですから。
 このキャンペーンこそが私たちが進めなければならない取組みです。なぜなら、そこで暮らす人々は私たちの兄弟であり、私たちの幸せのためにその人たちを不幸にしてはならないからです。では、工業化されたエビを作る人たちに対抗する手段とは何か。それは、「買わないこと」しか無いのです。

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