「森・海・大地が育むおいしい食べ物~子どもたちの未来のために」 <暮らしの巻 森・海・大地とともにある食と暮らし~そこから見える未来>(H23/11/6) 講師:島村菜津さん

第1部 島村菜津さんのお話

震災について

3/11の震災後、シチリアに行った。地震のことについて話すと涙ながらに共感してくれた。シチリアは地震大国。1906年メッシーナで8万人死亡。
3/11の震災後の6月、イタリアでは原子力発電所の再開の是非を問う国民投票で原発廃止を決めた。これは若者からお年寄りまで多くの人が参加したデモの結果。日本との比較。
陸前高田市を訪ねた話。

カルロ・ペトリーニ(スローフード協会会長)の言葉

エコロジストなのにスローフードを語らないのはおかしい。スローフードの運動に参加しているのにエコロジーを語らないのはおかしい。

環境と食との結びつき(旅における体験を通して)

  • 2004年から南半球を旅した。そのときの体験で環境と食とが一つに溶け合った。
  • ギニアは森が大変なスピードで消滅している。ノウハウもなく焼き畑農業を行っているため、大火事が起きている。日本の伝統ある焼き畑農業との違い。
    資源を西洋が押さえている。そのため加工業が育っていない。生きるために、やむを得ずやった結果。このような状況の中で、必死に伝統食を作っている。「1本の枝を取ったら、40本の木を植えなさい」という言葉。
  • アフリカで初のミルクプラントを作った、ある白人女性がいる。ベルベル族という遊牧民がいるが、国境が分断されているため、遊牧が出来ない。そこで、彼らの生活のために作った。
  • 陸路でアフリカを旅した。トラックの荷台に人やロバも乗っていた。住民が7人くらいの集落に着いたとき、そこの住民が濁った水を何度も何度も沸かしてお茶を入れてくれた。日本はなんと豊かなところだろうと思った。この人たちが、水を作り蓄えてくれる山が荒らされている日本の状態を見たら、とんでもないと怒ることだろう。
  • エクアドル
    海老の養殖地を作ったことで、マングローブが消滅した。そのために、大津波の被害に遭っている。世界で生産される海老の9割以上を日本が輸入している。抗生物質が使われる養殖地では、水鳥もいない。雑草も生えない。
    辻信一さん、アンニャ・ライトさん、中村隆一さんと、ナマケモノ倶楽部(http://www.sloth.gr.jp/)が応援しているコーヒー農園を訪ねた話。
  • イタリアのアマルフィ
    在来種のレモンを守っている。開拓地。崖に段々畑。非常に美しい風景。世界遺産ともなっている。この美しい風景を支えているのは、農民。畑がなくなれば、土壌は流出する。このことに人々が気づき、様々な職種の人がつながり、農家を支えるため、レモンを売り出している。
    サンマルツェーノというトマトが、栄養が貧しい火山灰土で作られている。トマトの実がたわわになる。とても美味しい。地元の人が購入し、農民を支えている。
  • インド
    ヴァンダナ・シヴァ。インドの世界的に有名な環境活動家。ヴァンダナ・シヴァの農場では700以上の在来種を守っている。ピサ・デヴィという人が中心。ニューデリーの若いお母さんたちが購入し、農場を支えている。
    その農場で、サティシュ・クマール(思想家)と、ガンジーの孫娘と、ヴァンダナ・シヴァが、10人ほどの人を相手に、話をした。私は日本でそのメンバーでやるなら、もっと人数を集めて・・・と考えた。ヴァンダナ・シヴァがそれを見抜き、「たった一つの種だけでも、それが大きくなればいい。環境運動は小さければ小さい方が良い。」と言った。
  • イタリア サルデーニャのオリスターノ湾
    カラスミの産地だったが、魚があまり捕れなくなってきた。そこで、漁業組合で、加工場まで作り、コンピューターの技術者も雇い、レストランも経営した。レストランはとても繁盛した。利益が出たため、今度は、ロビンソン・クルーソーのモデルとなった島を応援しようとしている。金銭援助だけではダメだと言って、実際にその島に行き交流し、自分たちはどんな事が出来るのかを考えようとしてる。
  • シチリアは昔は緑豊かな場所だったが、砂漠化し、現在のような自然環境になった。ドイツ、フランスで、環境運動が熱心に行われているのは、それだけ切羽詰まっているため。

☆結論☆・・・・・「食から始まる革命」

  • 食は家族にとって大事。
  • 戦争への抑止力になる。
    中国からの留学生が餃子を作ってくれた。食を通して友人になれる。政府が対立していても。外国に友人がいる事は、戦争への抑止力となる。
  • 食べ物の味で故郷とつながる。
  • 外国の自然環境との関わり
    コーヒーは、日本では作れない。輸入するしかない。そのとき、相手の国の自然環境を壊さない方法で作られたコーヒーを買う。
  • 自然。ここから私たちは食べ物を頂いている。
  • 500年、700年と続く、暮らしのモデルを作りたい。

第2部 島村菜津さんと湯浅優子さんの対談(参加者が書いた感想をもとに)

 以前はスローフードが誤解された面もあった。しかしここ数年で、食と、地球や暮らしとが、密接に関わっていることが理解されてきた。4人の孫や知り合いのこどもたちのために、という思いで活動している。(湯浅さん)

☆「田舎は好きでも収入や生活が心配」という感想に対して
 そのとおり。中央集権。これは世界と比較しても日本は異常。楽しい暮らしが田舎で出来るか、それが移住のポイント。知恵を絞って行きたい。(島村さん)
 田舎でも、都会と同じ収入を得て暮らしたいというのは、逃げの考えのように思います。(湯浅さん)

☆「スローフードという言葉を知らないけれども、それそのものを生きている山村のおじいちゃん、おばあちゃんの生活技術を受け継ぎたい」という感想に対して
 食から始まる革命の一番の近道は、美味しいものを作っている、おじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くこと。豆腐、食べ比べをしてみる。どれを人に食べさせたいか。生産者を大事にすること。(島村さん)

☆「コーヒーではなく、お茶を飲んだらどうですか?」という感想に対して
 昔は、環境問題に関わると、コーヒーも飲めなくなるのか、仙人にならなければならないように思っていた。それぞれの基準で選んで行けば良いのではないか。(湯浅さん)
 完璧じゃなくてよいと思う。出来る範囲で。楽じゃないと続かない。(島村さん)

☆「シェアハウスでは、食べ物は、収入や好みがそれぞれ違い、難しい」との感想あり。
☆コンビニに関する感想に対して
 若者が狙われている。ミックスサンドの中の添加物。50種以上になる。一つ一つは検査されている。しかし50種以上が組み合わさったときにどのような影響が出るのかこれは検査されていない。(島村さん)

☆電磁波過敏症の方の感想に対して
 とても大変。日本では電化製品が経済の要。だからこの症状の事があまり知られていない。電磁波過敏症の方は、一番まともな人。炭鉱のカナリヤ。(島村さん)

☆しっかりした和食の店がなかなかない、という感想に対して
 和食の世界はヒエラルヒーがあるからではないか。若くて素晴らしい料理人を売り出すこと。それに加えて、じわっと来る、その土地に行って食べなければわからない、そういう地元のお母さんたちが作っている料理。両方を応援していくこと。(島村さん)

☆島村さん
東大の鈴木宣弘教授。お母さんが三重県の海女。TPP反対でがんばっている。鈴木先生が、生産者に入るお金は3~6%。南半球で搾取されている生産者と変わらないと言っていた。この発言はNHKの番組ではカットされた。食品メーカー、流通メーカーに、お金が入っているのだ。

☆なぜ、ファームインを始めたのかという島村さんから、湯浅さんへの質問に対して。
 食べてくれている人の事がわからなかった。だから始めた。交流をしたいと思った。(湯浅さん)
 自分で何でもやろうとしないこと。間に入ってくれる人を探そう。ファームインを使うと、生産現場が見られる。(島村さん)
 食べ物が人をつなぐ、という感想に対して。これを一番言いたかった。(湯浅さん)

☆保育園の先生の発言
 こどもは、夏は、海のそばの家、冬は山の中で過ごすという保育園にいた。しかし、都会の保育園へ。そこで頼まれて、その保育園に自然を作っていった。それが自分の役割だったのかと思っている。

☆良い映画を紹介してほしい、という質問に対して
 「セヴァンの地球のなおし方」という映画の上映会を来年、スローフード・フレンズ北海道で行う。今後、公開されるミツバチに関する映画も良い。

☆「収入が低いので安いものしか買えない。そうすると、生産者が困る。そうすると良い生産物が減っていく。負のスパイラル。どうしたら良いか。」という質問
 フェアトレードのコーヒーより、チェーン店のコーヒーの方が、本当は高い。数字にだまされない事。(島村さん)

☆「便利さより、不便を。新幹線や飛行機より、電車や徒歩を。」という感想に対して
 歩くことは出会いがある。(島村さん)

☆島村さん
 こんなに、熱い思いをたくさん出して頂き、ありがとうございました。


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