「森・海・大地が育むおいしい食べ物~子どもたちの 未来のために」大地の巻 「おいしくなった北海道のお米」(H23/10/2) 講師:山川八重子さん

講師/山川八重子さん
聞き手/鈴木秀利さん(「アンの店」代表)
司会/齋藤聡子さん(環境プラザ)
場所:札幌市環境プラザ環境研修室
参加人数:31名

10:00~10:50 山川八重子さんのお話

 現在旭川でお米作りをされている山川さんは、田んぼから刈り入れした稲を、来場の皆さんのために持って来てくださり、その稲を前に凛とした声で、お米作りのはじまりから話し始めた。
 山川さんは、空知で「お米作り」に没頭する一生懸命な父親の姿を見て育ち、中学2年生で将来は農業をすると決め、その中でもお米作りをしたいと思っていた。
 昭和44年、叶って旭川市永山のお米農家に嫁ぎ、さあこれからという時に国の減反政策が始まった。
 お米作りを始めた山川さんを心配したのは父親で、20数年間お米作りの一番大事な時期が来ると、バスや汽車を乗り継いで来てくれ、田んぼをくまなく見て回り、帰る時に一言二言山川さんに残して帰った。時代が変わっても、作物の生育過程は変わらない。米のことは米が一番わかっていて、それが伝わってくるはずだと、そのために春に田植えをしたら毎日田んぼに通えという父の教えに、山川さんは今も夜中の10時~11時に毎日稲の様子を見に行く。すると昼間は見えない、夜中にだけ見せる稲の姿があり、月夜に照らされてわかることがあるという。
 そのようにお米と関わっていると、お米を作っているのではなく、お米に生かされていると感じるようになった。
さて「おいしくなった北海道のお米」であるが、おいしさを求めてどこまで行くのだろうか。皆さんにはこの稲を手にとって、匂いをかいで、感じてほしい。ここに根っこがあって、それを支えている田んぼがあるということを。このようによく実れたということは、稲にとって最高の環境だったということ。今まで収量を上げるために、信じて農薬や肥料をいっぱい使ったこともあったけれど、今は違う。イエスクリーンに基づいて農薬も減らし、特に今年は肥料も3割減、それでもこのようによく実ったのはどうして?自然の力であり、田んぼの力、今はそう確信を得ている。
 はじめは3.5haだった田んぼが周囲の高齢化や担い手の問題などいろいろあって、今は20haであるが、見て回るにはこれでいっぱい。また、環境への配慮も考えるとまだクリアしなければならないことがたくさんあるが、食べる人と向き合い何を望んでいるか把握し、継続していける農業をしなければならない。食べる人の理解なしにはできないので、食べる人を農業の現場にに迎え入れて体験してもらったり、情報提供を20年近くしている。農業のことを皆さんに知ってもらいたい、これからのことを一緒に考えたい、作ったお米をやっぱり食べてもらいたい、皆さんとコミュニケーションをしたいと思って今日もここに来た。農産加工品を作って販売もしているが、北海道のものは北海道のひとが食べるのがいい、ということも伝えたい。
 山川さんはここまで一息に話すと、ほっと笑顔で時間を確認された。

 高齢化が進んでいて課題もあるが、目標は90歳でお米作りを続けている方だという。
 「明日死んでもよいから、お米を作っていたい。続けていると投げ出したくなるような苦しいこともあるけれど、食べ物を育てている信念があるから、農家は、人間は強いなって思う。前の年に病気が出て、春に芽が出るか不安でいっぱいだったその芽が出たとき…感動するの、最高なのよ。それがあるから繰り返せる。そして、お米を待っている皆がいるから続けられるの」という、山川さんのお米作りにかける熱い思いが、会場の皆の心を打った。

10:50~11:30 対談 壇上は山川さんと鈴木さん

 はじめに鈴木さんより、お店を始めた経緯や自己紹介があり、兼業されている農業については、両親が農業は最高だといつも言っていて洗脳されたと笑いを誘って、話は担い手不足や農村の過疎化の問題に入り、山川さんの息子さんが農業を継いだ時の話になった。また、鈴木さんも感じている稲の力、自然の力について山川さんも、肥料を減らして自然の力を引き出した方が、おいしさの基準となるタンパク質の数値からみても、食べてみてもおいしいことがわかるという。
 北海道の米の品種については、農業試験場の研究の積み重ねが大きなベースであるが、品質や安全性を求めるには作る人の意識が一番であり、品種による個性をもっと打ち出さなければいけないこと、温暖化の影響については、昔はなかった高温障害への対策を、農業者の技術でどこまで応できるか実際の例を出し話し合われた。最後に鈴木さんより「山川さんが農業が大好きということが伝わった」という言葉に会場もうなずき、それが伝われば嬉しいと笑顔の山川さんだった。

11:40~12:55 試食(食材研究室へ移動)

 山川さんの田んぼでとれた3品種の炊飯については、お米によって水の重量や浸水時間等、指示があった通り、そのほかのことも時間に合わせてフレンズメンバーにより準備が整っていた。
 炊き立てのご飯のほかにお味噌汁と漬物も用意された。
 白いお皿のふちには赤、青、黄、緑と4種類のシールが貼られて、それぞれのそばに違う品種のご飯が一口ずつ盛りつけられ配膳された。これからこの4種を食べ比べ、正確に言い当てることができるかな、というクイズ形式である。
 「今年のお米は本当においしいと思って感動した」という山川さんのお米、ゆめぴりか、ななつぼし、ほしのゆめ、に一言ずつヒントが添えられる。もう1種類は、鈴木さんが持って来てくださったゆきひかりで「これだけ22年度産です」という最大の?ヒントに沸き、いざ食べ比べが始まった。白く輝くおいしいご飯を味わいながら、周囲の方と相談したり、時に真剣な表情で考え、紙に答えを記入して提出してもらう。全問正解者は最後に山川さんの「ななつぼし」とホクレンから提供していただいた「ゆめぴりか」がもらえることになっている。

12:00~12:30 環境研修室に戻り質疑応答

 壇上は山川さんと鈴木さん
 はじめに司会を務める環境プラザの齋藤さんから、この4回シリーズのテーマである環境という観点で、温暖化への対策について質問があったのち、会場からも手があがった。「お米作りで一番苦労していることは」の問いには、「人手で管理できることとそれに頼れない部分があり、虫や病気は困る。毎日田んぼをただ見るのでなく、1株1株の稲を見て回ることが大事」と語った。
 ここで鈴木さんから、山川さんとご主人の馴れ初めを聞きたいとリクエストがあり、これは会場にいた方だけの特典。
それからも企業と農薬の関わりをたずねる質問には、農薬は0にもならないが100にもならない、来年も農業ができることが大切であるとのお話であった。最後の質問となったのは、「地産地消」と「北海道の食材を広めたい」という相反する思いはどのように考えるべきなのかという問いで、山川さんは「経営の面や国民の利潤も考えなければならないが、目標は地産地消という思い」そして「日本から日本の食べ物がなくなったら、日本がなくなってしまうと思う(北海道も同じ)」と表現された。そして鈴木さんからは「自分の経営面積によって、どこに目標をおくか考えることが大事で、それは消費者も同じこと。自分は何をどうするのか、基準をもって勉強し賢くものを選ぶことが大事」との答えに皆それぞれに考えさせられたのではないだろうか。

 それから最後に、食べ比べの全問正解者が3名発表された(ほか、2つ正解者にも10名がお米をもらった)。時間は予定を過ぎ、お二人への温かい拍手の中で、大地の巻は終了した。


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