森・海・大地が育むおいしい食べ物~子どもたちの未来のために 海の巻「幻の魚『サクラマス』から川そして海を知る」(H23/9/3) 講師:西田たかお さん

1 生産者の現状について
(1)自身の仕事について
夏→イカ、秋→全国の百貨店の北海道物産市に出店、
冬→ボタンエビ、甘エビ、シマエビ、春→再び、全国の百貨店の北海道物産市へ
漁業のみでは不安。そこで、加工業を始めた。それに、自分の持っている20トン弱の船では、夏、冬のたくさん捕れる時期以外に動かすと、燃料代等経費ばかりがかかり、赤字になってしまうため。
(2)生産者の人口はこの半世紀で激減している。この流れを止めなければ、大変な事になる。少し高いかもしれないが、国産、地元のものを購入することが、生産者を支えることとなる。

2 サケについて
(1)トラウトサーモンについて
スーパーで安く売られているサケはたいていトラウトサーモン。アメリカでニジマスを改良してつくり出された。大量に養殖する。そのため、病気が発生しやすい。そこで、抗生物質を与えなければならない。独特の臭みが出てしまう。自分は食べられない。
(2)シロサケ(秋鮭)について
食べて安全。人間に稚魚になるまで育てられる場合もあるが、放流されて以降は、人間が何の手も加えていない。海で育った魚。漁獲量は安定している。
(3)サクラマスについて
漁獲量は減っている。漁船が減っている事も原因(ある程度の漁獲量がなければ採算が合わないため)。絶滅危惧種になる寸前。その原因は、サクラマスは、産まれてから1年間川で暮らす。しかも、産卵する場所が川の上流。この二つの事情から、川の環境悪化の影響をシロサケより受けやすいため。シロサケは産卵が下流でもよく、1年間も川で暮らさない。
川の環境の悪化の原因→特にダム。魚が上流にのぼれない。河床の環境も悪くなる。

3 サクラマスと環境運動
「せたなの美しい海と川を守る会」という団体を立ち上げ、環境保護運動を行っている。その成果が少しずつ出ており、サクラマスが上流にのぼりやすくするための堰堤のスリット化などが行われ始めている。一人一人の力は小さいけれど、集まると大きな力になる。
人間ばかりではなく、魚のことも考えたのなら、こんなダムは造らない。というようなダムが北海道各地にある。

4 海の環境変化について
海の環境も最近変化している。海の流れが速くなった。1マイル/1時間でも速い方だったが、最近は1.8マイル/1時間、というところもある。

5 湯浅優子さんとの対談、及び、参加者からの質問に対して
(1)
 1マイルは1.852キロメートル。海の流れは、南から北へ、たいていは、0.5マイル/1時間。
(2)
 温暖化で、今まで北海道で捕れなかった魚が捕れるようになったが、今まで捕れた魚は捕れなくなる。例えば鱈などは捕れなくなるのではないか。サクラマスも、海が暖かくなると、川から海へ下らないので、ますます捕れなくなるのではないか。生き物は、温度に敏感。
(3)
 サクラマスは、2キロ~3キロぐらいが一番美味しい。あまり捕れないため、スーパーに出回ることはほとんどない。富山の鱒寿司には北海道のサクラマスが使われていることが多い。有名な金沢の甘エビも、今は金沢であまり捕れないので北海道産を使っている。
(4)
 サクラマスは、川にいる間はヤマベという名前。サクラという名の由来は、桜の時期に産卵のために海岸に寄ってくるからという説と、桜色だからという説がある。
(5)
 北海道は日本海、オホーツク海、太平洋の3つに囲まれている。他県から見ると大変羨ましい環境。例えば、ウニの捕れる時期を聞かれても、日本海、オホーツク海、太平洋でそれぞれ捕れる季節が違うので、結局1年中捕れる。
(6)
 漁業の役割は、たんに魚を捕っているという事だけではなく、防衛上も重要だし(漁村がないと北朝鮮が侵入しやすくなる)、食育の場にもなる。日本の食を支えている。


カテゴリー: 活動日記
入会案内