2012年6月 Slow Food Newsletter

2012年6月 スローな物語

ドイツのカタツムリが20歳を迎えます

スローフード・ドイツが20周年記念を迎えるにあたり、熱い思いと、“おいしい・きれい・ただしい”の哲学を支援する新たな世代やスローフード会員の確固たる基盤を元にした力強い活動で将来を見据えます…

20年前、フランクフルトから少し離れた歴史的な街ケーニッヒシュタイン(Königstein)に、ある小さなグループが集まり、スローフードにとって二つ目となるであろう全国規模の協会の誕生について語り合いました。初めは、ある人々からは過小評価されていましたが、今日ではドイツにおける重要な社会・政治運動となり、1万1千人以上の会員と80のコンヴィヴィウムを携えて、食べる喜びと環境責任の関わりの振興や、おいしく・きれいで・ただしい生産者と社会の結びつきを作るよう取り組んでいます。

スローフード・ドイツは、1992年にミュンヘンで公式に誕生し、1993年の終わりには150人の会員を数えました。数年と経たないうちにこの数は何千にも膨れ、90年代の終わりには、スローフード・ドイツの最初の重要なイベントを企画する事となりました。2007年には、Markt desguten Geschmacks (味のマーケット)を初めて開催。この全国的な見本市は毎年4月にシュトゥットガルトで開催され、約400の出品者と8万人以上の来場者を魅了し、マーケット、様々なディナー、多彩なラボラトリーや会議、討論会を展開しています。
スローフード・ドイツの二つ目の全国イベントはSlowFischで、2008年にドイツ北部の沿岸部ブレーメンで開始されました。国際イベントのスロー・フィッシュ同様、SlowFischでは水産物に関連する伝統について語り、ヨーロッパの北洋における持続可能な漁業の振興に励みます。

この二つの重要なイベント以外にも、コンヴィヴィウムは多くの地域イベント、マーケットや教育活動を企画し、持続可能な小規模生産者が参加しています。その中には4つのプレシディオや32のドイツの味の箱舟も含まれています。

近年では、Slow Food Youth Deutschlandの高まる運動にも刺激され、スローフード・ドイツは、新たな企画を打ち出しています。昨年は、Teller statt Tonne(食卓にイエス、ゴミ箱にノー)キャンペーンで大成功をおさめ、次々と現れる無益な食の無駄問題を強調しました。

多くの活動の中で、1月にはドイツの若者が初のSchnippeldisko (Dance and slice/刻みレコード)を企画。無駄に捨てられてしまう運命にあった野菜を利用したイベントです。ベルリンのマーケットに設置された長いテーブルで200人以上が何トンもの野菜をスライスし、そのバックにはDJのパフォーマンスによる音楽が流されました。翌日、より公正な共同農業政策支援のため企画された抗議運動Wir haben es satt! (もうたくさん!)の中で、8千人前の“レコードスープ”がふるまわれました。

スローフード・ドイツのウルスラ・ハドソン(Ursula Hudson)会長は、協会が成長し続けるにつれて《若者の情熱、理想主義、創造力》の振興と柔軟性が必要であると確信しています。“若者の情熱と取り組みはスローフードの未来にとってだけでなく、私たち全てにとってポジティブなサインです。なぜなら、私たちの食システムの未来は、彼らの手の内にあるからです”とハドソン会長は語ります。“食には、経済と社会の鍵を握る役割があります。そして若者に食品産業、農業、漁業の未来を保障でき、都市に住む人々においしく、きれいで、ただしい食の信頼できる産地へのアクセスが可能な環境を作ることが重要です。”

6月の最初の週末には、スローフード・ドイツの古くからの会員がケルンに集まり、近年の支援と若者たちと共に一連のお祝いと年に一度の総会を行いました。皆で将来を考察する素晴らしい機会となりました。
6月2日土曜日、若きスローフードのネットワークにより企画されたTeller statt Tonneのイベントは最高潮に達しました。ボランティアたちは朝の8時に中心広場に集まり、前日に地元の農園から救出された野菜を切り始めました。活動家でシェフのワム・カット(Wam Kat)氏は、最近の多くのスローフード・ドイツの公開イベントで料理長を務めており、キッチンスタッフとともにおいしそうな料理を準備し、それらは次から次へと長いテーブルにサーブされていきました。

土曜の夜のお祭りは、Ehrenfeldデザイン地区へと引き続きました。この地区にはコミュニティーの斬新なプロジェクトがあり、デザインの提案と地域の職人による食品を通して地区の再評価を行うことを目的としています。都市菜園でのアペリティーボの後、参加者は小さな企業やお店、施設内に招致された職人ラボラトリーに足を運び、夕食、討論会、そして音楽で、お祭りは幕を閉じました。

スローフード・ドイツの20年の軌跡に関する更なる情報は、ドイツ国内出版の最新版スローフード・マガジンにて特別企画を掲載。ダウンロードはこちら(ドイツ語)

スローフード・ドイツのサイトを訪問www.slowfood.deもしくはフェイスブックにてドイツ協会を追跡。

エミリア地震救済

先日の地震で大きな被害を受けたコミュニティーと生産者を手助けする寄付を…
Campaigns and Relief: Emilia Emergency | Progetti | Slow Food Donate

カルロ・ペトリーニ、国連にて

スローフード会長が、先住民問題に関する国連の常任会議に出席。先住民グループに属さない民間組織の代表者が初めて、発言の場へ招致されました…

スローフード会長カルロ・ペトリーニが先月5月14日にニューヨークで開催された、先住民に関する常任会議(UNPFII)に出席。会議開始から10年、この国際連合のフォーラムには先住民グループに属さない外部メンバーが迎え入れられることはありませんでした。ペトリーニ会長は、会議期間中、食の権利と食糧の主権についてのスローフードの見解を表明する名誉を授かりました。

“この25年間国際スローフードは、人類全体と私たちの惑星の未来を保障する手段として、食糧・農業分野の生物多様性の保護活動に取り組んできました。”とペトリーニ会長は口を開きます。“しかしながら、民族文化の多様性や彼ら自身による領土管理の権利を保護することなしに生物多様性を守ることは、無分別な企てなのだと明確にする必要があります。彼らにとっての必要性と自らの決定による、領土管理、栽培、狩猟・漁業、収穫の実践の権利は譲ることができません。このような多様性は、大地創造者の最も大きな力であり、未来の世代に知識の素晴らしい財産を伝承し維持するための唯一の手段なのです。”

ペトリーニ会長は、現在スローフードが推し進めている、生物多様性のためのスローフードの基金http://www.fondazioneslowfood.itとテッラ・マードレの世界ネットワークhttp://www.terramadre.info/による先住民コミュニティーの支援活動を報告。私たちの伝統とより持続可能な食システムへの注目として、地球を養い育むためには地元の食品の再導入がどれだけ必要不可欠であるかを繰り返しながら、それが単なる“根拠のないノスタルジー”ではないことを力説しました。

ペトリーニ会長のフォーラム招致は、Indigenous Partnership for Agrobiodiversity and Food Sovereignty(農業・生物多様性と食の主権のための先住民パートナーシップ)へのスローフードの参加の結果です。2010年に誕生しフラン・ロイ(Phrang Roy)氏が議長を務めるこのパートナーシップは、食モデルを定義し、科学者や研究者の協力のもと、農業における生物多様性保護の実践活動を割り出すことに取り組む、組織と先住民コミュニティーのネットワークです。

2011年、国際スローフードは、スローフード・スウェーデンとスローフード・サーミ(Sápmi)と共に、ヨックモック(スウェーデン)にて、初の全面的に先住民文化に捧げるテッラ・マードレ、Indigenous Terra Madre(先住民のテッラ・マードレ)を企画しました。第二回ミーティングは2014年インドにて開催が予想されています。

世界を変える食

サローネ・デル・グストとテッラ・マードレ2012が10月25日から29日までトリノで開催されます。イベントサイトは、プログラム完全版と共にオンラインで閲覧可能

147…146…145…サローネ・デル・グストとテッラ・マードレ2012へのカウントダウンが始まりました!
スローフードにより企画された史上最大のイベント、二年に一度、何千・何万もの来場者が集う世界で唯一のイベントまで、もはや5カ月を切りました。

回を重ねるごとに、テッラ・マードレとサローネ・デル・グストの距離は縮まり、よりつながり合い、今年はようやく、一つの大きなスペースを設置する事となりました。巨大マーケットでは、食コミュニティーの食品を試食したり購入したりすることができ、テッラ・マードレの会議は全来場者に公開されます。

10月25日から29日までトリノのリンゴットとオーヴァルは、イベントのスローガンにある通りの“世界を変える食”を探る交流で溢れる中心地となることでしょう。スローフード・イタリア会長ロベルト・ブルデーゼが、公式プレゼンテーションでイベントの数字を要約したところによると、100カ国以上から約1000の出品者、44の会議、味の劇場・ラボラトリー・食イベントが170、さらにグループで参加可能なイベントや教育的な企画も付け加えられます。

全ての情報はオンラインのイベントサイトにて。入場券やイベント予約チケットの購入、過去のイベントのビデオや写真の閲覧、イベントプログラムの完成版(約12MB)もチェックできます。
www.slowfood.it

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またはこちらで会員になり2012年のサローネ・デル・グストとテッラ・マードレに無料で入場する

 

コカ・コーラからフリータウンへ

コカ・コーラと、ピエモンテの自家製ビール工房の共通点は何?

ほとんどの人には知られていませんが、世界で最もグローバル化された飲み物、コカ・コーラの名前の一部はアフリカに関係があります。
コーラとは、カカオ(アオギリ科)と同科の実で、西アフリカの熱帯雨林、特にシエラレオネとリベリア、現在もまだ野生の環境が残る国々が原産地です。シエラレオネの南東地域(Kenema 、Kailahun地帯)ではコーヒーとカカオ‐影を偏愛する最も小さな植物‐との同時栽培を行っており、一年に二回、4月から5月と11月から1月に収穫します。

シエラレオネでは、儀式や祭典の際に友情のシンボルとして招待客に歓待を表すため、合意や双方の和解を調印するためなどに利用されます。ラマダンの際には、生産者は水、ショウガ、コーラ、トウガラシ、そして時に砂糖を入れたジンジャーエールのような飲み物を用意します。コーラは、伝統的な製薬(食後にかむと消化を助け、実に含まれるカフェインは集中力を改善)として用いられ、マンディンカ族、テムネ族の織物の染料として使用されています。

シエラレオネでは、長い紛争が全世代を悲劇的に襲い、コーラの生産にもまたマイナスの再転落をもたらしました。熟練の生産者は戦争で亡くなったり移住したりして、世代間の伝統的な知識の伝承は乱暴に中断されてしまいました。このため、今日ではしばしば、栽培に手が行き届いていません。コーラの木は遅れて栽培され、それも不定期になされます。

2012年‐FAOと共にスローフード財団が実現したプロジェクトに、 ‐ 、Kenemaのコーラのプレシディオが誕生しました。ほぼリベリアとの国境に接するシエラレオネ南東のDalruとGegbwemaの村の48の小生産者を巻き込み、共に協力し合い、栽培、加工、商品化の改善のために働き始めました。
ここまでは、コカ・コーラにつながる点は全くありません。全く、名称以外は。この名前は“盗まれて”世界でもっとも有名なブランド名の一部に組み込まれてしまったのです。

ここでヨーロッパに移動しましょう。正確にはイタリアに。イタリアではここ数年、いくつか生産者達が少しレトロなソフトドリンク‐ガッゾーザ、ジンジャー、スプーマの様な‐を再提案し始めています。レシピと材料の原産地に新たに着目し、自然な材料で、保存料・着色料を使用せず、生産されています。

この中にはピエモンテの著名な地ビール工房もあります。テオ・ムッソ(Teo Musso)氏のバラデン(Le Baladin)。ここでコカ・コーラに到達します。むしろその再訪と言ったほうがよいでしょう。
“スローフードがコーラの実を見せてくれた時、熱中してすぐに了解しました”とテオ・ムッソは語ります。“バラデンが保存料・着色料のないナチュラルなソフトドリンクを生産してから、もはや数年がたっています。世界でもっとも有名な飲み物を咀嚼し製造し直すことは、避けることのできない挑戦でした。しかしバラデン・コーラには、シエラレオネのコーラ栽培援助、アフリカに1000の菜園をプロジェクトへの参加という、スローフード財団の重要なプロジェクトを経済的に援助する事に貢献するという付加価値がありました。そのため、私の個人的な味覚とコーラのクラシックな風味を取り入れたレシピを作りました。もちろん、材料は最高のセレクトのみを使用しています。酸性化剤‐レモン汁の自然なものから醸し出されるものでなければ‐を使用していませんし、絶対的に着色料の添加もしていません。インダストリー製品の曖昧なものを付け加えることなく、色そのものに差をつけることができたことを誇りに思います。私たちのコーラは、アマランサスの深紅色で、貴重な実から抽出されたものなのです。”

バラデンは、プレシディオの小生産者から直接コーラを購入し、Kenemaのプレシディオ・コーラの支援に努め、それ以外にも60の菜園(共同菜園や学校菜園)の実現を‐販売のパーセンテージで‐支援するよう取り組んでいます。

 

今月のレシピ

『バンベルクのホルンポテトのクラシックサラダ』

ブラートヴルスト(bratwurst)やその他のフライ料理に完璧な付け合わせの、永遠の料理。この伝統レシピをスローフード・プレシディオのドイツのジャガイモで用意しましょう。
ジャガイモのバラエティーと同じく、ジャガイモのサラダのレシピも、世界中で国により、地域により(そして家族により)大いに異なり多彩です。このレシピは、ホーエンローエ、タウバー、マイン、フランケンのコンヴィヴィウムにより提供されました。調理には、スローフード・プレシディオのバンベルクのホルンポテトを使用します。

小さな角笛の形(“hörnla”は“角”を意味します)をしたこの伝統的なジャガイモは、その植物のもろさがとりわけ栽培を困難にしているにもかかわらず、今でもドイツ南部で栽培されています。市場からはほぼ姿を消したこのジャガイモは、今日では主に家庭菜園で見られます。プレシディオは、この品種保護に取り組み、農家・農園と共に土地の一部をこのジャガイモの栽培に捧げることに決めました。
伝統的に、ジャガイモのクラシックサラダは衣をつけた揚げもの料理と共に用意される、フランケン地方のドイツ料理に広く普及した料理です。豚肉料理からお魚料理、キャベツからカブまで何にでも相性がよく、今日ではグリルや伝統的なブラートヴルスト(牛肉と豚肉を使ったソーセージ)の付け合わせとしても食べられています。

4人分 調理時間:約30分

・ホルンポテト 1 kg
(その他の黄色い品種のジャガイモでも可)
・エキストラヴァージンオリーブオイル 50 ml
・野菜のブロード(出汁) 125 ml

・白ワイン酢 40 ml
・ハチミツ 5/10 ml
・タマネギ 1個
・チャイブ(細かく刻む) 1把弱
・塩・コショウ

作り方/皮ごとジャガイモを洗います。鍋に入れて水で浸します。
ジャガイモが固いままになるよう注意しながら茹でます。その間、ブロードを沸騰させ、みじん切りにしたタマネギを10分間煮ます。ブロードを再度温め(沸騰させないでください)、お酢、ハチミツ、塩コショウ、オリーブオイルを加えます。じゃがいもを少し冷ましてから皮をむいてスライスします。まだ温かいじゃがいもをブロードに混ぜます。時々かき混ぜながら、1時間から3時間冷まします。お好きなように塩・コショウで味を調え、刻んだチャイブをふりかけます。必要ならば食べる前にブロードのドレッシングを加えてください。

 

おいしいエコ生活

「自家製食器洗剤」
今月から、私たちのキッチンや洗面所から危険な化学製品を取り除き、なおかつ節約できるアドバイスを届ける新たなセクションを設置。自分達で、健康と環境とそしてお財布に優しい、私たちの掃除用洗剤や化粧品を作ってみましょう!
“おいしいエコ生活”は、どのように無駄をなくし、リサイクルやリユースができるか、そしてどうやって危険な化学物質を避けられるかに関して語るセクションです。エコ・フレンドリーな(…そして食べられる!)食器洗剤のレシピから始めましょう。商業洗剤は、しばしば化学物質を含み、それは食器皿に残り、ひいては私たちの食べ物にも残り、環境にもダメージを与えます。しかしこのレシピは、完全に生分解できる材料のみを使用しています。

レモン 3個
塩   200 g
お酢(白)150 ml
水  ½ リットル

作り方/レモン3個を切りミキサーに(皮と種ごと)入れ、濃い液体になるまでかきまぜます。塩200gとお酢150ml、水半リットルを加えます。さらにミキサーにかけて、よくかき混ぜます。少し大きめの鍋で15分間煮立てます。ガラスの容器かボトルに、かき混ぜたものを保存します。使用の際には洗い桶を浸した水にカップ半分のエコ洗剤で充分。手袋の使用をお勧めします。
この洗剤は、商業洗剤の様に泡立ちませんが、異なる自然動因による配合のため、驚きの洗浄作用があります。試してみてください!
その他の自家製洗剤・石鹸・化粧品のレシピを知っていますか、または共有したいエコ・サステナブルなアドバイスが何かありますか?件名を“おいしいエコ生活”と記してこちらのアドレスcommunication(a)slowfood.comまで、メールをお待ちしています。


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